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最高裁判所第一小法廷 昭和29年(あ)2072号 決定 1954年11月04日

主文

本件上告を棄却する。

理由

弁護人塩谷栄一の上告趣意は違憲をいうが、差戻前の訴訟手続は、差戻判決において破棄されたときは、その破棄となった限度においてその効力を失うこというまでもないけれども、破棄の理由とならない従来の訴訟手続が所論のごとく全部その効力を失うものということはできない。

そして、一件記録によれば、原判決の維持した差戻後の第一審裁判所は、差戻前の第一審において取り調べた各証拠及び差戻前の控訴審で取り調べられた証人村中俊夫、同柳生敏の受命判事に対する訊問調書を証拠調した上被告人を二回に亘り詳細に質問していることを認めることができるから、事実審の裁量に属する弁護人の新らたに申請した証拠調の申請を却下したからといって、所論のように採証又は訴訟手続に違法があるとはいえない。

されば、所論違憲の主張は、その前提を欠き採用できない。

よって同四一四条、三八六条一項三号により裁判官全員一致の意見で主文のとおり決定する。

(裁判長裁判官 入江俊郎 裁判官 真野 毅 裁判官 斎藤悠輔 裁判官 岩松三郎)

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